旧統一教会の被害者救済新法
皆様こんにちは、弁護士の吉田勇輝です。法律事務所かがやきのウェブサイトにお越しいただきありがとうございます。今回のトピックは、旧統一教会の被害者救済新法についてです。
1. はじめに
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受け、悪質な寄附勧誘行為等の規制を内容とする被害者救済のための新法(以下「救済新法」といいます。)と改正消費者契約法が、2022年12月10日に成立し、同月16日に公布されました。2023年1月5日から施行されます。
今回は、その内容について説明したいと思います。
2. 救済新法
救済新法の正式名称は、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」といいます。
救済新法においては、宗教法人等の法人その他の団体(以下「法人等」といいます。)が個人からの寄附を勧誘するに際して、不当勧誘行為により寄附者を困惑させることが禁止されます。不当勧誘行為の具体的内容として、救済新法では、①不退去、②退去妨害、③勧誘をすることを告げず退去困難な場所へ同行、④威迫する言動を交え相談の連絡を妨害、⑤恋愛感情等に乗じ関係の破綻を告知、⑥霊感等による知見を用いた告知の6類型が列挙されています。また、法人等が、寄附の勧誘に際して、借入れや居住用建物等の売却によって当該寄附のための資金調達を行うよう要求することも禁止されます。
法人等がこれらに違反した場合で、かつ、一定の要件を満たす場合には、国は勧告を行うことができ、当該勧告に従わない場合、国は、措置命令を出した上、かつ、その旨を公表することができます。措置命令にも従わない場合、1年以下の懲役や100万円以下の罰金といった刑事罰の対象となります。
また、救済新法においては、上記のような不当勧誘行為により困惑して寄附をした場合の取消権も設けています。当該取消権は、寄附を行った本人が行使できる他、子どもや配偶者において、養育費や婚姻費用等を保全するために代位行使することも可能であり、かつ、救済新法では、養育費等について履行期が到来していなくても代位行使が可能とされており、子どもや配偶者からの代位行使を容易としています。
さらに、救済新法は、法人等に対し、寄附の勧誘を行うに当たって、①自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないようにする、②寄附者やその配偶者・親族の生活の維持を困難にすることがないようにする、③勧誘する法人等を明らかにし、寄附される財産の使途を誤認させるおそれがないようにするといった配慮義務を課しています。ただし、これらの配慮義務に違反した場合であっても、刑事罰の対象にはなりません。
3. 改正消費者契約法
救済新法と同時に成立した改正消費者契約法では、霊感等による告知を用いた消費者契約の勧誘に対する取消権につき、契約締結から5年、被害を認識したときから1年という行使期間につき、それぞれ10年及び3年に延長するなどの改正がなされています。
4. 終わりに
救済新法等の成立は、被害者救済のための大きな一歩とは言えるものの、その内容等に対しては、一部の弁護士等からは、実効性が不十分との声も上がっており、今後の実務の運用等を注視していく必要が高いと言えます。
当事務所では、消費者問題を始めとする一般民事事件について幅広く取り扱っております。ご相談等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
法律事務所かがやき
弁護士 吉田 勇輝